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特集

エリア特集2017-12-05

資生堂、椿咲く「ふるさと」を地域とつくる

資生堂ジャパン(資生堂)は商標が「花椿」であることがきっかけとなり、東日本大震災以降、椿を市の花としている大船渡市で活動を続けている。活動の始まりは2012年9月11日。津波で被災した大船渡市立赤崎中学校の仮設校舎前に、資生堂の社員が赤崎中学校の全校生徒とともに、その年の3年生の生徒数と同じ41本の苗木を植樹した。その後も赤崎中学校とは ウェブ会議で椿の生育状況について日常的に情報共有したり、生徒が詠んだ俳句集を毎年制作、贈呈するなどの交流を続けてきたほか、大船渡市内での植樹も行い、「椿の里」づくりに関わり続けている。

地域資源としての「椿」

赤崎中学校仮設校舎前の斜面に植えられた椿

 東北・気仙地域は、太平洋沿岸のヤブツバキの北限として知られ、古来、椿油を食用や整髪料に活用する文化をはぐくんできた。椿油は、血中コレステロールを下げる働きをもつオレイン酸の含有率がオリーブオイルよりも高く、保湿力や抗酸化力に優れているといったことが知られているが、安価な食用油が多く出回り、整髪料としてもさまざまな製品が開発されるようになった現代においては、椿を生活に活かす地域文化は廃れつつある。

 地元には椿を産業資源・観光資源として活かしていきたいという根強い想いはあるが、若い世代や子ども達の多くは、椿の花を見て楽しむことはあっても、椿を「使う」機会はほとんどなくなっていた。

子ども達と共に「椿に慣れ親しむ」機会を

 気仙地域での資生堂の取り組みは、1つの地域に深く関わり、地域の方たちと一緒に汗をかいて作っていくスタイル。同社のビジネスでは取引先や客などのステークホルダーと、顔の見える関係と丁寧な対応をモットーとするところから、復興支援活動においても地域の人と顔の見える関係から見つけた課題をともに乗り越えていきたい、との考えが背景にある。この姿勢は、相手が中学生でも変わらない。

 地元との交流を通して、地域の人々の想いに触れた資生堂は、赤崎中学校でのプロジェクトに、さまざまな形で「椿に慣れ親しむ機会」を取り入れてきた。次世代の復興を担う子どもたちに地域の椿への理解や愛着を深めてほしいと、椿の植樹とその後の育成を一緒に行ったり、生徒とのWEB会議を開いたり、生徒の詠んだ俳句を編纂した俳句集を贈呈したりなど、密な交流を続けてきたのだ。

椿の搾油の準備で、椿の種の皮むきをする生徒達

 2015年から始めた椿油の搾油体験もその一つ。「椿を育て」 「実を収穫し」 「実から油を搾る」一連の作業を中学生と一緒に行った。地域を回って椿の実を集める中、実際に椿油を使っている人に出会い話を聞いたり、鹿が椿の実を食べてしまっていることに気づいたりしたことは、汗をかかなければわからない経験だ。

 搾油体験会当日は、大船渡の伝統的な搾油機による搾油を見学した後、実際に家庭用の搾油機で搾ってみる体験を実施。参加した生徒たちからは、「椿の活用法や椿の歴史を学ぶことができ、関わりを深めることができた」「椿油で作ったソースがとてもおいしくて、家でも作ってみたい」「椿が誇らしく、大切にしたい」という声が聞かれた。「大船渡市の花」が「ふるさとの花」として生徒達の心に花開いた。

仮校舎でおこなわれた最後の贈呈式

 新校舎の完成と移転に伴い、赤崎中学校でのプロジェクトは2月に行われた「椿の俳句集贈呈式」が最後となった。

 俳句集の贈呈式には、全校生徒が参加。5年間の活動を振り返るスライドショーが上映されると、さまざまな思い出の場面で生徒達から歓声が上がる。生徒達と椿、そして資生堂が共有した「椿との時間」がかけがえのないものになっていることが強く感じられた瞬間だった。

 椿の俳句集は、学校生活をともに歩んできた椿に、卒業する3年生の生徒たちが思いを寄せて詠んだ作品を一冊にまとめたもので、1ページに1作品が掲載されており、同社宣伝・デザイン部のスタッフが、俳句からイメージした椿のイラストが添えられている。3年生には俳句集が、1・2年生には椿のノートが贈呈された。

 資生堂ジャパンのCSR部・伊與田智美部長は、生徒達に「『椿』がご縁で、皆さんと一緒に『植樹』から始まった様々な一連の活動を楽しく行うことができました。私どもも活動を通じて元気をもらい大変有り難く思っております。また、椿を観察しながら詠んだ俳句作品に、関係者一同毎回感動しながら俳句集を作成しました。いつまでも詠んだ時の自分の気持ち、友人の気持ちに思いを馳せてください」と語り、「南北に長い日本列島において最北端で頑張っている大船渡のヤブ椿。皆さんも椿のように困難にも負けず、まっすぐ、大きく成長されることを願っています」とエールを贈った。

 赤崎中学校は4月に新校舎へ移転し、同校でのプロジェクトは一旦終了となった。しかしながら、椿を通して生徒達に育った「ふるさとへの誇り」はこれからの人生で、生徒達に勇気を与え続けるに違いない。

「椿の里」に向けて継続する支援

 2012年以降、資生堂は、「椿」がこの街の財産として大きな力の源になることができれば、との想いのもと、「椿」が街の新しい産業となり、観光資源としても活用できるように椿の植樹活動を毎年行ってきた。

 2014年度からは産業化を加速させるための具体策として、日本ツバキ協会の協力の元、東京の町田から樹齢30年ものの椿を運び、植樹することを実施。同市の協力の下、これまでに約440本の苗木と90本の成木を植樹してきた(2016年6月現在)。

 この資生堂の「椿の里」づくりの活動は、今年度も継続され、5月25日は大洋会との植樹会が福祉の里大洋会敷地内で、同26日にはキャッセン大船渡(4月29日開業)においてシンボルツリーとしての椿の植樹が予定されている。

 また、樹齢1400年とも言われる椿の古木「三面椿」(末崎町)の香り成分を配合した「資生堂リラクシングナイトミスト椿の夢」を、今年は通販サイト「資生堂ワタシプラス」で再び販売。売り上げの一部は大船渡での椿の植樹活動にあてられる。「椿の里」が、人々の思いと一緒に育った椿の花々で彩られる日は、着実に近づいてきている。

文=一般社団法人RCF/荒井美穂子

※この記事は「いわて三陸 復興のかけ橋プロジェクト」、および「オルタナオンライン」に掲載されたものです。

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